プロローグ

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 初めは戸惑ったが、レンリは次第に、自分が悪いんだから仕方ない――そう思うようになっていた。だが、成長するにつれて、どうしてこんな目に合わなければいけない――という思いも強くなる。  レンリの受けていた扱いは、語るに忍びないものだった。  八歳になった頃、レンリは突然地下室へ入れられた。しかし、今まで奴隷よりも酷い扱いをされてきたレンリは、地下室へ入れられたことに恐怖を感じることはなかった。むしろ、休息の時が与えられた――と安堵した。  しばらくして、レンリの瞳は、徐々に下がってきた瞼によって隠された。疲れきった小さな体は深い闇へ落ちて行く。  これが、レンリの人間として過ごした最後の時間だった。
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