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世界的に有名な科学者がいた。
彼の研究は、これからの人類に有益な物だけではなかったが、それでも世界中が、彼を褒めたたえた。
彼が最も得意とした分野は、薬学だった。
彼の研究が生み出した数々の特効薬は、副作用もなく、世界中の人々は、彼こそが天才だと口を揃えて言った。
ある日、一つの薬が生まれた。
それは、男性の染色体にのみ発動される、劇薬だった。
薬は、絶対零度から摂氏100℃という幅広い温度で気化し、また、微量であっても確実に死をもたらす物だった。
偶然から出来上がったこの薬は『ノアの箱舟』と名付けられ、絶対に開封されないよう、厳重に管理される事になった。
事故は、何の前触れもなく起きた。
研究中の別の薬品が、突然爆発したのだ。
研究室に保管されていた全ての物が、外部へと流出した。
『ノアの箱舟』もまた、例外では無かった。
一度流出した薬品は、当然戻らなかった。
世界中に蔓延した『ノアの箱舟』は、瞬く間にその威力を発揮し。
翌日には、世界から男という人種を消し去った。
『ラストディ』と呼ばれる事となったその日が、奇しくもその薬を生み出した者の命日となった。
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