終わりの日

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世界は絶望の色へと染められた。 その事件からしばらくの後。 一人の科学者が現れた。 彼女もまた、天才と呼ぶに相応しい科学者だった。 このままでは滅亡するしかない人類を、自分なら救えると言った。 彼女は、彼の一番の助手だった。 絶望の縁に立たされた人類に、彼女は一体の人形を差し出した。 科学者は人形と、それについての説明を行った。 人形は『TYPE:02』と呼ばれた。 人形は、まったく人間と変わらない作りだった。 もちろん、生殖に関しても。 人形の持つ染色体は〈XV〉という特殊なものだった。 その特殊な染色体ゆえに、人形と人間の間から産まれる子供は、全て男になるのだと。 科学者は言った。 つまり、最初のうちは人形と人間から子供が産まれるが。 やがて時が経てば、また自然のサイクルに戻り、男が戻って来るのだと。 そう言った科学者の提案を、誰も拒否する事はなかった。 このプロジェクトは後に『ドール計画』と呼ばれる事になった。 計画は、まず試験的に何体かの人形を使用する事から始まった。 五体の人形は、それぞれ世界中から選ばれた女性達へと託された。 人形を引き渡す上で、女性には一つの義務を与えた。 それは、一年以内に子供が出来なかった場合、人形を即座に返却する事である。 人形には、数個のプログラムが組み込まれていた。 一つは、製作者である科学者を『マザー』と呼ぶ事。 一つは、『マザー』の命令に絶対従う事。 一つは、引き取った人間を『マスター』と呼ぶ事。 あくまで自分が『人形』だという事を忘れないように。 それが、人形に組み込まれたプログラムだった。 ここから、『人形』と『人間』の歴史の幕が開けた。 後に、試験は成功し、量産される人形は、こう呼ばれるようになる。 『愛玩人形<ディアドール>』 人形の寿命は人間の5倍。 全ての物語は、ここから始まった。
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