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「2ヶ月前――ルシフェルを見つけた」
テーブルのコーヒーカップをやっと手にした壱成は。いよいよ本題に入る前に、気を静めようとひとくち冷めたコーヒーを口にした。
小野サトリっていうんだ。挨拶は遅れたけどいずれ連れて来るね。
「実は」
「マエ振りから考えれば――同じ身体に、別の天使も宿っていたということか」
「さすがバアルさま話が早い」
話が見えた緒方は残りの丼の中身を再び掻き込み始めた。
それをまた、お茶で飲み込んでから。
「――熾天使だったルシフェルなら、下位の天使の人格など、飲み込むことなど容易いだろう」
「それが…もう一人は、ラファエルだったんだ」
また手を停めて。
「二人の…熾天使?――本当か?」
まあ、一人は堕天使だから、天使と悪魔と言うわけか。
72柱の中にも、力天使や座天使が堕ちて悪魔と成った者が居る。
「言祝ぎとエモノを確認したんだ。まだ人格的にはどっちも出てきてなくて、人間のオノサトリのままだけど」
「そうか。実に興味深い、が。お前、その話。他の奴等にはしていないな?」
「他のヤツラ?――72柱に、ってこと?してないよ」
これから云うことは忠告だ。
と、たった5分程度で大きな丼を平らげた緒方は、湯のみの最後のお茶も飲み干して。
ご馳走様でした、と律儀に手を合わせてから。
「――どちらの人格もまだ出て来て居ないなら、暫くは伏せておいた方がその『オノサトリ』の身の為だ」
「何で?」
「考えてみろ。ルシフェルとラファエルを同時に宿すということは。最高位の天使と悪魔を一度に消すいい機会だ」
他に噂され畏れられてこそ、悪魔は自分の存在意義を確認できる。
史上最強の堕天使ルシフェルと、三大天使の一角ラファエルを斃したとなれば、72柱の中で、一気に力を得るに違いない。
「お前が俺を殺して、72柱の頂に立ちたいと思うのと、変わらないだろう」
「またまたぁバアルさま…。そんなコワい事考えてナイって」
と笑顔で応じながらも、壱成は新たな問題を提示されて、心の中で舌打ちした。
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