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「――え…?何で俺の名前…うわ!コノイトルンだ!――俺、CD全部初回限定版買ってます」
握手してください!と零れる笑顔は、思わずこちらまで笑みを誘われる、柔らかさで。
『ああ。コレは。――ラファエルだ…』
癒しを司る熾天使と呼ばれたあの笑顔が、戻ってきた。
「お帰り。ラファエル」
と、こちらもハグで洗礼。
「――え?えぇ!?」
突然の二人からのスキンシップに混乱するばかりのサトリからはもう、
死の匂いがしないから。
壱成が首を傾げる。
『そんなはずないよ』
サトリが屋上へ上がって来たときに満ちていた負のオーラと、死への渇望は。紛れも無く天界から落ちたルシフェルの気そのものだったのに。
今はどうしてその気配が全く消えてしまったのか。
「――ねぇ、ルシフェル…。小野サン。俺には挨拶、無いの?」
申し訳なさそうに応えるサトリの顔は、あの尊大なルシフェルの面影は無くて。
「えぇっと…――?すみませんどちら様…デスか?」
それでも人をバカにするところだけは忘れていないようだ。
「ルシフェル、オマエ!!あれだけ人に説明させといて、コレか!!」
まあまあ、と間に入ったアサキは、説明したの…俺だよ?と苦笑い。
「ミカエル!お前、消さなくていいところまでわざと消しただろ!」
「お手数ですが――また最初からやりなおしてください」
それから彼は。ルシフェルではなくて、ラファエルです、と言う飛鳥井アナに。
「――いいじゃんどっちでも。結局アンタにとっては会いたい奴だってコトには変わりないだろ」
「――!!」
強い視線で振り返る飛鳥井アナの。
『お?――いい目』
――ミカエルの瞳に一瞬宿った憎悪を、愛と情欲を支配する悪魔シトリーを魂に宿す、壱成が見逃すわけが無い。
まだ小野サトリがルシフェルなのかラファエルなのか。
それは解らないけれど。
面白い玩具を手に入れたことには変わりないから。
これから楽しませて貰おうかな。と最終的には機嫌を直して。
「んふふっ…」
ニノマエイッセイは、その細面に、含み笑いを浮かべた。
(第1章 了)
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