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最近は請求書しか入らないサトリの部屋の郵便受。
前に開けた日を忘れた頃くらいに久々に覗いて見たら。
携帯代金、水道光熱費、住民税の納付書、この間買ったレンズの請求書…。と、うんざりする封筒の束の中に。
「――何だ、コレ」
『触るな危険』と自らアナウンスしているようにしか見えない、見るからに怪しい漆黒の封筒が一通入っていた。
封筒にはサトリの住所と名前が白い文字でくっきりと印刷されていているから。
死の宣告を受けたようで気分が悪い。
裏返すと、同じく抜けるような白文字で記してある差出人の住所は。
M区内のオシャレ過ぎる地名で、自分とはご縁が無い場所だとサトリは思う。
『Carnival PANDORA』というのは人ではければ店舗名か。
「カーニバル…パンドラ?」
――そういえば住所といい名前といい、お姉ちゃんの居そうな店だな。
部屋に戻ったサトリは、黒い封筒を、シュレッダー用の箱へ要らないDMと一緒に放り込んだ。
その日の夜。
『あ、ルシフェルさま?』
「アイダさん。止めろよその呼び方」
気がついたら、屋上に居たあの日。初めて会ったはずの4人の男と、サトリは何故か連絡先を交換した。
3人の『有名人』にはサトリは連絡する気は起きなかったし、まさかそんな相手から連絡が来るとは思っていなかったけれど。
この一月で、唯一アサキとだけはメール交換と電話をするようになった。
「じゃあ、サトリさま。カルナバルの封筒、届いたでしょ?明日だけど、どうするの?」
どうも何処かへ一緒に行こうという誘いの連絡らしい。
「だから、「サマ」は止めろって…何?カルナバル?何だソレ」
え?届いてないの?おかしいなあ…カルナバル・パンドラ・トキオだよ?
パンドラ…――あ?
「もしかして、あの、不幸の手紙みたいな、真っ黒い封筒の、アレか?」
「アハハ!不幸の手紙ぃ?」
シュレッダーの横のゴミ箱を手探りして。恐る恐る指先で摘んで取り出す。
『Carnival PANDORA TOKYO』
「シトリー様のクローズアップマジックショーだよ。日本ではまず取れないプラチナチケットだから、一緒に行こうよ」
「シトリー様?…ああ、ニノマエさんか」
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