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「――我が光で、貫け」
サトリの声に反応して。ぐにゃり、と柔らかい飴細工のようにシグマは形を歪める。
過剰な反応を示した颯とは異なり、じっとその変化を待っていたルンは。
サトリの手の中に現れた黒いツヴァイハンダーを見て。
「――そっか…」
懐かしそうに、微笑んだ。
「小野サンは。ルシフェルだったんだ」
颯君寝ててよかったな。言祝ぎ聞いた途端部屋が破壊されるトコだぞ、と苦笑いされて。
「あのさコノイトさん。ちょっと良く、見て貰えないかな?」
サトリが差し出すツヴァイハンダーを手にしたルンは。刃に顔を近づけてみると。
「あ?――コレ、諸刃か?」
刃も鍔も柄も全て黒いルシフェルのツヴァイハンダーなのに。
「そう。それでね?」
サトリは再びルンからツヴァイハンダーを取り戻すと。
「『Expie-le avec mon sang』(我が血で贖え)」
言祝ぎに応じてふわり、と白い霧と化して散る黒いツヴァイハンダー。
「オイオイ…今度は、ラファエルか?」
「――スゲェ…上手く行った!」
さっきは一回シグマに戻してから唱えたけど。直接でも変えられるんだ。
嬉しそうにサトリは言うが。
手の中に戻った白いツヴァイハンダーに。
「何だ、レイピアじゃないのか。黒塗りが白塗りに変わっただけじゃねぇか」
颯と同じツッコミを冷静に入れられたが。
「――でも。白い諸刃の剣なら…、オマエ。ラファエルなのか?」
「どっちなんだろう、っていう相談をするためにさ。今日飛鳥井さんトコロに行ったんだ」
サトリは白いツヴァイハンダーを元のシグマSA-9に戻して机の上にそっと置く。
飛鳥井さんに30分で終わる話じゃないって叱られて。
収録終わってとりあえずメシに行こうって話になって…。
アイダちゃんと飛鳥井さんがああでもないこうでもないってガンガン飲んで話をしてたら。
「――あの状態になりました」
と、相変わらずベッドで死んだように寝ている二人を指し示してぺこり、と御辞儀をした。
「よく解りました」
ルンもお返しにぺこり、としてから。
「でもなぁ。そんなことなら俺に一番に相談に来ればよかったのに」
俺、あいつ等みたいにどっちかを毛嫌いしてるってんじゃなくて。堕ちた後のルシフェルとも、ラファエルとも仲良かったからさ。
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