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「――そうなんだ」
「颯君なんか『小野さんが悪魔に穢された』って、カルナバルパンドラのニュース読んだ日、バカみたいに奴等に嫉妬してたぞ」
「――正直に言うとさ。俺、どっちかっていうと今。ルシフェルの方に気持が偏ってる気がするんだ…」
サトリにとってのラファエルの呪文は、無意識に口から紡がれるが、ただそれだけのことで。
記憶を夢で見たり、感覚を共有していると思えるのは、ルシフェルの方だ。
「ま…あの写真見たら、そうだろうな、ってのは解るよ」
あれってウルルと明けの明星だろ?とルンが指差したのは。
先日壱成とアサキと過ごしたオーストラリアで撮影した写真のパネル。
鮮やかな紫と薄い青から、白、オレンジへと移り変わる早朝の東の空に輝く金星と、黒い影として浮かび上がったエアーズロック。
どちらもルシフェルの象徴だ。
「コノイトさん達が『自分は天使だ』とか『悪魔だ』って自覚してる、って感覚がどんなモンなのかイマイチわかんないんだよ。多分俺、其処までまだ辿り着いてないよな。過去の夢はリアルに見えるんだけど」
「――悪魔のことは知らねえけど。少なくとも俺と颯君の場合は、何時の時代でも産まれて物心つくころには、自分が何者かは解ってたな。――ちょっと今までに小野さんみたいなケースがあったのか。ツテがあるから、調べてみるよ」
「ツテ?」
「――人間のフリして暮らしてる俺等みたいな奴等が、意外に沢山居るってコト」
「ありがとう」
「――よーし、じゃあ。コノ話は一旦置いといてさ」
小野サン全然飲んで無いだろ?お近づきに俺も乾杯したい。
「じゃあ…」
と、サトリがキッチンから持ってきたのは。ウェイヴァリー・エステート1998。
「――オーストラリアで買ってきた、っていうか無理矢理『コレは美味いから』ってニノにワインセラーごとお土産に持たされたんだ」
その名前を聞いたルンが苦笑いする。
「……」
「コノイトさん。ワインに罪は無いよ?」
「――ホントだな」
「…でも俺、正直開け方わかんなくて放っておいたし。グラスなくてコップだよ?」
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