rondo ~輪舞~

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というサトリに。 「コークスクリューくらいあんだろ?」 「こーくすくりゅー?」 こういう、ぐるぐるって螺旋状の金具がついた、コルク抜き。と説明されて。 「ああ!ソレ。あるある…」  手渡されたコークスクリューを使って慣れた手つきで栓を抜いたルンは、二つのコップに注ぎながら。 「コップワインて…呑んだくれだな」 と苦笑い。 「じゃ、折角だからムードだけでも良くする?」 サトリは小型のプラネタリウムを部屋の中央にセットして。 「コノイトさんて、誕生日何時?」 「8月30日」 「え?もうすぐじゃん」 リモコンで指定をして。 部屋の明かりを落としたサトリは。 椅子が無いからルンの隣に並んで机に腰掛けた。 「――?」 天井に現れる満点の星空を見上げて。 「コレね。8月30日に東京で見えるはずの、星空」 「――そうなんだ」 1等星から8等星まで、12万個の星が天井を彩っている。 「ホントは俺達の上であんなに輝いてるのにさ。地上が光の洪水じゃ。負けるよなぁ」 じゃ。本当の東京の星空に。 じゃ。誕生日祝い前倒しで。 「「かんぱーい」」   星明かりの下で二人は呑みはじめた。  間近な人の気配に颯が目を開くと。何故かこちらをじっと見つめているアサキが横たわっていて。 「なっ…!!!」 スプリングが波打つ勢いで、颯は起き上がるが。 「――っってぇ…」 頭の後ろを殴られた後のような、重くて鈍い、痛みが直ぐ襲ってくる。 「何処…ですか、ココ」 「リーダーの部屋だよ?」 颯ちゃんと俺が一緒に迎えた記念すべき初めての朝だよ? と相変わらずベッドから気だるそうに見上げながらアサキはにっこり笑う。 「どうして貴方はイチイチ誤解を招く言い方をしたがるんですか」 朝っぱらから貴方の顔を見たら頭痛が酷くなる、と眉間を指で押さえながら颯が嘆く。 「――そうだてめぇ…。一遍死んで来いよ…」 まさかの床で雑魚寝をさせられたトップアーティストコノイトルンが。むくりと起き上がって胡坐をかきながら頭を掻く。 「何時の間に…コノルンが?」 「やっぱりさっぱり覚えてねぇか、颯君。――オイ。シャワー借りんぞ、小野さん」 「んむ?――むぅ…」 床でクッションを抱き締めながら眠っていたサトリは、まだ起きる気は無いようだが。 「――リーダー床で寝て痛くないのかな…」
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