rondo ~輪舞~

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「それなら、貴方が降りればいいでしょう」 颯は足の裏でぐいぐいとアサキを押し出して。 「えぇ!?――颯ちゃんヒドイ…っ」 ぐえっ、とカエルの鳴き声のような声を発しながら、アサキはベッドから墜落した。 広くなったベッドで颯は腕時計を確かめながら、 「――7時半…ですか」 まだもう一眠りできますね。 9時に起こしてください、とまた ぱたりと横たわって眠ってしまう。 「うぅ…」 アサキは強かに打ちつけた腰をさすりながら起き上がると。 颯に言われたとおり。 よいしょ、とサトリをベッドに抱え上げた。 「――あ。ルン君」 シャワーを浴びてさっぱりした顔で現れたルンは。 帰り支度をしていたアサキに声を掛けられて、 「――俺は颯君とは違うぞ」 気安く話しかけんなよ。俺はフルフルもアイダアサキも大っ嫌いだ。と、眉間に深く皺を刻んだ顔を背けた。 「ハイハイ。解ってまーす」 シザーエプロンの入っている大きなバッグを降ろして玄関に座ったアサキは、靴紐を結び始めた。 「あのね?俺仕事あるから帰るけど。颯ちゃんが9時に起こせって言ってたから、起こしてあげてね?」 「――オイ」 「何?」 「――小野サンのこと、御前等どうするつもりなんだ?」 またルシフェルを叛乱の旗手に祀り上げるつもりなのか? と、半ば非難を含んだ口調で責められたアサキは。 「うん?…――どうするもこうするも。正直俺、半分ラファエルでも。構わないって思ってるくらいでさ」 俺もニノもね?もしルシフェル様じゃなかったとしても、サトリ様の事大好きになったから。 「リーダーがやりたいようにすればいいって、決めたんだ」 「――」 立ち上がって振り返ったアサキの視線を。 ルンは初めて真正面から受け止めた。 『コイツ――迷いは、ないのか』 天使は何時でも、 「絶対に正しい答え」 を探そうとするのに。 悪魔は何時でも、 「自分はどうしたいのか」 で判断する。 天使が「欲望」と呼ぶものこそ、悪魔が欲しがる「自由」。 選択を迫られる時。心のまま選び取る彼らを。羨ましい、とガブリエルは何時も思うのに。  最高位の天使であるという矜持が何時も邪魔をする。 「なあ。――ルシフェルは…堕ちて自由になれたのか?」 「それは。自分でリーダーに聞こうよ。ルン君」 じゃあ、またね。とアサキは。鞄を掴んで立ち上がると。ルンから視線を外して部屋を後にした。
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