rondo ~輪舞~

25/31

1786人が本棚に入れています
本棚に追加
/1663ページ
 『車でひのテレまで送るよ』 というルンの申し出を固辞した颯は。 「――もうこれ以上コノルンに甘えられないだろ」 電車で行くからいいよ。と昨日アサキから借りたスーツを着て玄関のドアを開けた。 サトリも見送りに出て。 「颯君いってらっしゃい。メールするね?」 「――あはは。行ってきます。サトリさん。また」 ひらひらと振る手が隙間から見えていたけれど、そっとドアは閉められて。 「――」 とうとう二人になった。 賑やかだった部屋は突然音を失ったようになる。 「――」 サトリは壱成から依頼されている壁画用の写真を合成する作業があるが、特に作業時間は決めていない。 『それ以外に仕事が無い、ってのも…考えもんだよな。また、フリーの仕事貰うか…』 名刺入れを捲ってまた営業しないとなあ、と溜息をつきながら。 「――コノイトさん、今日はスケジュール入って無いのか?」 新曲の関係の番組出演や取材は一通り落ち着いているルンは。 「今日は、午後からアルバムレコーディングの打ち合わせ」 「へぇ!?新譜出るんだ!」 また限定盤予約しないと… 「売り上げ貢献してくれるのは嬉しいけど。予約しなくていいよ?プレゼントするって」 「ホント!?――でも、悪いなぁ…」 「その代わり、煩い悪魔には内緒な?」 「――うぅん…、やっぱり自分で買うよ。ゴメン」 ニノには言い訳できないし。と言うサトリに。 「――解った。じゃあ。2枚やるから」 御前のモノだから好きにすればいい。と、ルンは譲歩した。 「あ…。じゃあ。もう一枚。アイダちゃんの分も…」 「ああ、もう、2枚も3枚も一緒だな」 っていうか、アイツ聞くのか俺の歌。 ルンは先ほど全く分かり合うことなく別れた、アサキの背中を思い出す。 「こないだアイダちゃんカラオケで歌ってた。スッゴイ、上手かったよ?」 っていうか、ニノがよしって言うまで歌わされ続けてた。 何だかその光景が目に浮かぶようで。 「――遣い魔もまぁ…大変だな」 俺だったらあんな我儘なご主人様のところ、5000年も持たねぇよ。絶対下克上してるな。と苦笑い。 「あんたは何歌うんだよ、小野サン」 「うぅんと…。『A.ランバート』とか、『テンペスト』とか『ディフェクター』とか…。『コノイトルン』とか。撮影のとき、ボーっとしながら音楽聴くの好きだから。歌うのも好きだし」 洋楽も邦楽も何でも聴く、というサトリに。
/1663ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1786人が本棚に入れています
本棚に追加