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さて少し話をしよう
ある少女が居た。
その少女は十人並の美しい顔立ちで
そこそこのプロポーションをしていた。
勿論、他の異性が黙っている訳も無く
誰もが彼女に近づいていく。
それはやはり同性にもいえる事だ。
ところがそれは何時も長くは続かない。
少女は彼らが嫌いだったから。
少女は次第に孤独になっていき
そのうちに皆のストレスのゴミ箱になっていった。
それでも彼女は辛いとも苦しいとも言わない。
それどころかまるで嬉しい顔を誰しもに見せる。
それは艶めかしい美しさがあり
それは毒々しい恐怖もあった。
それから一年の月日が流れた。
彼女はある日思い立ったように
窓の外に微笑み振り返ってこう言う。
「生きいてる限り彼方達には私の気持ちなんか分からないだろうね。なんて言ったら彼方達は「君こそ分からないだろう。」って言うだろうね。自分の事を理解してほしかったらまず相手の事を理解しろ何て言う綺麗事を並べて自分の事を理解してもらおうと努めるのでしょう?最初から私の事なんて理解するつもりはないんでしょう?何も知らない。ただ単純に一言で言えるほどの人間は誰も居ないのに彼方達は理解したふりをして、そんな上辺だけの関係を友達や親友と呼び、お互いをもっと知ろうとする関係をカップルと呼び、理解し合えた関係を夫婦と呼ぶでしょう?最初から何も変わっていないのに理解し合えたつもりで相手の事は何でも分かっているような口で相手を讃え陥れ・・・。だからね。私は彼方達に言うの”生きいてる限り彼方達には私の気持ちなんか分からないだろうね。”」
そう言って彼女は窓の外に身を投げた。
最期まで彼女は笑っていた。
一瞬だけそれはまるで鳥のように飛んだような気もした。
それでも重力と言うものに逆らえず下に堕ちていった。
誰も何も言わない。
静かになったこの教室。
僕はとても居心地の悪い不快な感情に駆りたてられて
彼女が消えた窓の外を観る。
血の匂いがする。
人の悲鳴と組み合わさった声がこれまた居心地の悪い不快な思いをさせる。
そして僕は彼女の言葉に愕然として呟いた。
「生きてる限り彼方達には私の気持ちなんか分からないだろうね。」
やっとその意味が分かったような気がする。
そう・・・。ような気がするのだ。
だから僕も堕ちていった。
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