カメ、走る

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「……ふむ、あの時の誠は少々乱心ぎみだったしな…仕方ない…。」 彼女はそう言って近づくのを止めた。 ほっ、助かった…。 彼女の言ったことが気になるが、それよりも気になることがある。 「てかさ、大体君の名前はなんていうんだよ。」 「ん?言ってなかったか?」 俺は頷いた。 彼女は少し考えて、少し笑って口を開いた。 「西園寺恭葉(サイオンジ ヤスハ)だ。ではまたな、誠。」 西園寺、という彼女は背中を向けて、教室に帰っていった。 はて?西園寺……恭葉…? どこかで聞いた名前のような…… キーンコーンカーンコーン なにか思い出しそうな所でタイミング悪くチャイムがなった。 「まぁいいか。急ごっと。」 俺は急ぎ足で教室に向かった。 ちなみに教室に行く途中で足をつったのは秘密だ。 つった足を治すのに時間が掛かってしまい、ホームルームに間に合わなかった。 そして教室に入ると、いきなり目の前に麗菜がいた。 そしてすぐさま身の危険を感じた俺は二三歩下がった。 「ねぇ、あの女だれ?」 あの女とは多分西園寺のことを言っているのだろう。 にしても怖い。麗菜の笑顔が。 「今日知り合ったばかりの友達だよ。」 とだけ言っておこう。 「うそばっか。だってチューしてたじゃん。」 「ハァ!?」 チューだと!? コイツきっと幻覚を見たんだ! なんか知らんが興奮状態に入って幻覚見たんだよ!! 「麗菜?してないからな。チューなんてしてないからな。」 俺がそう言うと麗菜は懐からいきなりカッターとホッチキスを取出し、俺の口に突き出した。 「クスッ。もう誠なんて信じない。だって私のものじゃないんだもの。だったら私が壊してあげる。せめて私の手で眠らせてあげるね。」 え?なにこれヤンデレ? てか俺お前のものじゃねえし!! 俺は俺のものだ!!
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