序章

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「やめて!」 泣き叫ぶ女。私は怒りと嫉妬で我を忘れ、その女をぶった。 真っ赤に染まった頬を抑え、膝をついて涙を流す女にどうしようもない苛立ちを感じる。 まだ、まだ足りない。 私は心を真っ黒に染め、その女の黒い艶めいた髪の毛を憎しみを込め強く引っ張った。 「いやぁーっ!!」 頭を抑えながら痛みにもがく女。私の手の平にはたくさんの髪の毛の束。こんなにも抜けたのか。気持ち悪い。 私はその髪の毛を、女に投げつけた。 長い髪の毛ははらはらと宙を舞い、地面へと降り注ぐ。顔を歪め、嘆く女に更に蹴りを加えた。 風が吹く。 空は快晴だった。 黒い雲で埋め尽くされた、私の心とは裏腹に。
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