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乱れた呼吸をなおしながら、屋上のアスファルトに寝転ぶ傷だらけの女を見下ろす。
「もうやめて……」
朦朧としている意識の中、小さく呟いた。すがるような瞳と、涙で濡れた頬はまるで悲劇のヒロインのよう。
それがまた、私を駆り立てるのだ。
お前が受けている痛みより、私が受けた痛みの方が大きい。憎悪は女が謝る度、その大きさを増していった。
果てない怒り。そこまで私を怒らせたお前が悪い。
女はたくさん血を吐いた。アスファルトが鮮やかな赤で染められ、太陽の光を受け輝き、それはまた艶やかさを増す。
ぞくぞくした。心の奥底から湧きあがるこの感情はなんなのだろう。
でも、まだ足りない。
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