66人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう嫌だ」
喉の奥から絞りだしたような掠れた声。聞き取りづらかったが、確かにそう言った。
初めて女が私に抵抗した。
無数の傷を負い、ぼろぼろのはずの体で立ち上がり、ゆっくりと目指した場所は屋上のフェンス。
呆気に取られて見ているだけの私。
震える足と手で、滑り落ちそうになりながらもフェンスを這いあがる。
登りきったところで振り返った。
その表情は明らかにおかしかった。
瞳孔の開ききった目で私を睨み、少し触れれば壊れてしまいそうなほど弱っているはずなのに、なぜか勝ち誇ったような顔をしていた。
一体この女に何が起こったのだろう。
「呪ってやる」
女は言った。
そして笑いながら、飛び降りた。
最初のコメントを投稿しよう!