744人が本棚に入れています
本棚に追加
大勢を前にこんな所で喧嘩を売るつもりは毛頭ないが、怒りは収まりそうにない。
(…場所移動してから、痣だらけになるまで殴ってやるよ…)
誠は、物騒な程楽しそうに相手を見つめた。
「いいぜ。付き添いでもなんでも好きにしろよ」
誠の言葉を静かに聞いていた慎也は、くすりとわずかに笑ったが、それもすぐに引っ込んでしまう程度のもので、気付いたものは誰一人として居ない。
慎也は一言告げてから教室を出ようと教師に向き直り扉に手を掛ける。
「そうゆうことですので」
-ガラガラ
「そういえば今日、出張で伊野先生いないんだった…」
扉を閉めて歩き出しそうとした途端、慎也がぼそっと何かを呟いて立ち止まる。
誠は危うく背中にぶつかりそうになってしまい、少し目線を上にやって相手を軽く睨みあげる。
「…保健の伊野か?寝るだけなんだから、必要ねーだろ」
丁度いい。絶好のチャンスじゃねぇか。
誠はこれからのことに思いを馳せつつ誰も居ない廊下を再び歩きだした。
その身に、何が起こるかも知らずに…。
「………そう」
.
最初のコメントを投稿しよう!