744人が本棚に入れています
本棚に追加
ベッドに縛られ縫い付けられたように動けない誠の近くに寄り、慎也は満足げに生暖かいような優しいような、なんとも言えぬ眼差しで微笑む。
一方、そんな眼差しを向けてくる慎也に誠は獰猛な獣のように牙を剥き出しに思い切り睨みつけながら暴言を吐きまくる。
「…さっさと解きやがれ糞野郎。早くしねーとテメェのご自慢の黒髪を羊みてぇに刈り取るぞ」
「自慢にはしてないけど、佐藤が好きならこのままにしておくよ」
「好きじゃねぇって言ってんだろ。むしろ嫌い」
「好き嫌いはよくないよ?でも俺は、佐藤の髪好きだよ。その傷みきった色素の薄い髪の毛は凄くタイプ」
「意味わかんねぇしうぜえよカス」
段々と話が脱線していることにも気が付かず、奇妙なやり取りを繰り広げ続ける二人を呆然と少年が見つめる。
「えっ、と……お二人はやっぱり恋人同士…ですか?」
「………………」
少年の純粋な部分から来る自然な質問を聞いた途端、ピシ…と部屋の空気が軋む。
同時に石化したように誠がまったく動かなくなってしまった。
「……あっあの…?」
わたわたと少年が慌てて停止したままの誠の様子を伺う。
「…殺す。やっぱりテメェだけは許さねぇ…!」
「ひっ!!」
.
最初のコメントを投稿しよう!