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「テメェ等」
「あ゙!?」
誠怒号が響き渡るのと同じくして、またもや見知らぬ人物が扉の前に立っている。
そういえば扉が開けっ放しだった。
「今は授業中だってのに、随分と楽しそうなことしてんじゃねぇか…」
低めの渋い声が耳に心地好く残る。
だがその声は明らかに剣呑さを含んでおり、僅かだが掠れてしまっていた。
「……誰?」
「ちょっ…体育の堺(先生)ですよ!」
「―あぁ。」
堺は学校でも名の知れた不良教師で、見た目はイケメンなのだが、性格のえげつない様はまるでどっかの我が儘な王様のようだと生徒の間でもっぱらの噂だ。
なにしろ中身とのギャップが激しく、新入生の大半が堺の顔と中身の酷い裏切りに泣き出してしまうらしい。
「んぁ?縛られてんのは………テメェ、佐藤か…?」
「うっせ、ちげーよバーカ」
「………無理だよそれ」
半ば呆れ気味の慎也を睨みつけ、なるべく堺に顔を見せないよう俯いたのだが…、
「…そうだ。無理だぜ、俺様がお気に入りの佐藤くんを見間違えるわけねぇだろ…?」
そのまま背けた顔を強引に引き戻され、顎を堺の手で固定されてしまった。
いつの間にお気に入りになっていたのか気になる所だが、取り敢えずこの手を放してもらいたい。
「…へぇ、随分とエロい格好してんじゃねぇの………お前、こーゆうのが趣味なのか…?」
一通りジロジロと誠を眺め回した堺は、顎にあった手を外し、縛られたままの誠の腕を優しく撫で始めた。
縛られたヶ所を撫でる意図はよく掴めないが、とてつもなく不快な気分にはなってきた。
「…こんなん趣味にしてるわきゃねーだろ。…それともなにか、さっきからテメェがジロジロ俺のことを見てくんのは、縛られた俺が羨ましいってか?」
仕返しまでとはいかないが、せめて少しでも堺を嫌な気分にさせてやろうと、ずいっと縛られたままの腕を差し出し、相手が嫌がりそうなネタをあえて出した。
―すると何故か、堺の頬がほんのりと赤く染まった。
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