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日が沈み、街には人々が溢れかえる時刻。
路地裏では、不良らしき少年が明らかに酔っ払っているであろう、スキンヘッドでピアスだらけの男に盛大に絡まれていた。
「お~ら兄ぃちゃんよぉ。黙ってねぇで金出せやぁ~」
ゆらゆらと体を揺らしながら、男はさらに少年へと近付いていく。
「…聞いてんのかよー、怖くて声も出せまちぇんかぁー?んー?」
「………」
少年は男に髪をグシャグシャに捕まれながらも、ただ男を睨み据えるだけで、一向に口が動く気配はない。
「………おいってば」
「……………」
どんなに話かけても、まったく反応を見せない少年にいい加減焦れたのか、男が少年の体を軽く揺する……が、やはり無反応に終わった。
「…………ぁ、」
「…………」
男は一瞬くじけそうになったが、なんとか気を持ち直し、これが最後の手段と言わんばかりに必死の形相で大声を張り上げた。
「さっきから、ナメてんのかてめぇッ!一発ぶん殴―ゴスッ
「……さっきから、ギャーギャーうぜぇんだよカスが。」
男はこの短い間に何が起きたのか分からなかった。
が、自分の顔が地面にぐりぐりと押し付けられていることには気が付いた。
一瞬頭を押さえる圧力がなくなり男はなんとか視線を上へやる。
そこには、足を軽く上げほくそ笑む少年と、少年の靴底が見えた。
「―消え失せろ」
「!!!」
***
「…ったく、雑魚ごときが粋がんなよ面倒くせぇ」
「ぅ…あ、ああ悪魔……ぐがっ」バタッ
屍と化した男を踏み付け、口角を上げつつ微笑む姿はまさに《悪魔》のようだった。
このような出来事が後に噂となり、そして誠の武勇伝となり、さらに誠の餌食となった男により色んな尾鰭がついて語り継がれることになった。
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