Ⅰ 出会い

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誰かいるのか? 靴を脱ぎ捨て、なぜか明かりの灯されている居間に向かう。 障子の前に立ち、ゴクリと唾を飲む。 落ち着け、多分あの靴からして相手は女性だ。 それも、小柄な。 女性相手に暴力はいけないが、追い出すことは出来るはずだ。 がっ ―――バンッ 勢いよく障子を開け過ぎたせいで、すごい音が響き渡った。 中を見渡すと、こちらを向いて、ひとりの女性がお茶を飲んでいた。 二十代ぐらいだろうか。結構顔は若く、可愛らしかった。畳まで伸びる蜂蜜色の髪は緩やかなウェーブがかかっていて、優しそうな印象を与える。 あまりの驚きの光景に動けないでいると、女性が卓袱台に湯呑みを置き、にこと笑いかけた。 「おかりなさい。」 直後に声がきこえた。りん―と鈴を優しく揺らしたような、綺麗な声。 「た…だいま………て……はい?」 思わず、返事をしてしまった。 はっ!なんで見ず知らずの人に………いや、そもそも不法侵入だ! 「雨宮 詩津さん」 また、にこと彼女は微笑む。 「はっはい‥………」 返事をしてから気付いた。 あれ?なんで名前知ってるんだ。 「あの、あなた誰ですか?」 家に入ってから少しして、やっと彼女の正体を尋ねる言葉を発せられた。 そう言うと、彼女は手を顎にやり、考えるポーズをとる。 「そう、ですねぇ……」 「いや、別に考えなくても、誰でもないなら速やかにお引き取りをおね――」 「なら、『はこびびと』というのは如何でしょう?」 .
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