マキちゃん

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  昼過ぎにアルバイトが終わりコンビニを出るとすぐに、ケンちゃんから携帯電話に着信が入った。 『どうだ、びっくりしただろ』 子供が成功したイタズラを自慢するような興奮が声ににじんでいる。 「そりゃあしたよ。昨日と格好が全然違うし」 『驚いたのは昨日の俺だよ。普段のあの子見てこれはお前にぴったりだと思ってセッティングしたのに、昨日あんなカッコで来るだろ』 「うん。僕は今日の方がいいな」 派手なタイプの子の方が会話は弾む場合が多いので飲み会の席では楽でも、終わる頃にはもう疲れてしまう。恋人にするなら昨日のマキちゃんよりも今日のマキちゃんの方が断然良い。 『で、あの子お前のこと好きらしいけど、どうよ。アドレス教えたんだろ。デート誘えよ。覚えてるか、好き好きアピールな』 流れがそうなることはわかっていたがやはり戸惑う。 携帯電話を耳から離し画面を見てみると新着メールの表示が出ていた。メールのやり取りはほとんどないのでマキちゃんと考えて間違いないだろう。 『ちょっと待て。アドバイザー交代する――あーもしもし』 携帯電話を再び耳に当てると聞こえる声がケンちゃんから女の高い声に変わった。ぎょっとしたが状況はすぐに飲み込めた。ケンちゃんはブレーキを踏まずに突き進み、アルバイトは休んだらしい。 『マキさあ。結構オクテだから気をつけてね。ってきみ童貞くんだっけ。じゃあ心配ないかな』 自慢できないステータスが知られていて苦笑する。 『下ネタはダメね。それからーー』  
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