マキちゃん

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マキちゃん

翌朝、約束通り昨日会ったひとりにメールを送信した。「おはよう。昨日は楽しかったよ」と簡単な内容をボーガスに非難されながら。 他にもうひとりアドレスは聞いていたが、その子を選んだのは昨日素っ気無かったのでおそらく返事をよこすまいと踏んだからだ。もちろんそんな企みも包み隠さず伝わるのでボーガスはため息をついた。 「せめてまた遊ぼうくらい入れた方が良かったんじゃないかな」 (相手がもう遊びたくなかった場合嫌がられるじゃないか) 「君は考えすぎる。もっと楽に構えた方がいい」 (それは自分でも思うよ) コンビニのバックヤードで飲料を棚に補充しながらボーガスと会話。ボーガスは雑誌コーナーで女性誌の表紙を眺めている。 僕は現在フリーターで、コンビニの他には大学時代の先輩が開いているバーが忙しい時にだけそこを手伝ってる。 大学を卒業して就職浪人の身になってからすぐにアルバイトを始めたこのコンビニは学生時代客だった頃から通い始めてもう6年になる。オフィス街に位置するため客の入りが一番多いのは昼時で、学生や社会人が朝食を調達し終わる今くらいの時間帯は割とゆったりとしている。 レジに回ると店内に客はひとりだけだった。姿の見えない同僚はトイレにこもっているに違いない。胃腸が弱く、よく青い顔をしている。 現在時刻は10時。素っ気なかった子にメールを送ってから2時間ちょっと。ふと気になってポケットから携帯電話を出して見てみるといつの間にかメール着信が1件あった。 正直なところまったく期待していないというわけでもないので緊張しながら確認すると、発信はケンちゃんからだった。がっくりと同じくらいほっとしてメールを開くと「起きろ恋のミラクル!」と内容は理解不能だった。送信先の間違った<好き好きアピール>ではないだろうか。 空のレジに戻りながらなにが言いたいのか考えていると店内にひとりの客がおかしな動きをしていることに気がついた。明らかに商品を選ぶ動きをしていない。手にはなにも持っていないようだ。 そういえばこの客は店に入ってきて随分になるような気もする。若い女で、多分年は僕と同じくらいだろう。長い髪を後ろでまとめフレームの細いシャレたデザインのメガネをしていて、背が低く体のラインが出にくい服装をしている。どちらかと言うと地味な印象だ。
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