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「んぁ~。よく寝たぁ」
人にぶつかって気絶したのも忘れ、紅子は呑気な声を出して起き上がる。
するとその隣から
「だろうな。3時間も寝てたんだから」
と冷たい声。紅子がその声に振り向くと、そこには少年が座っていた。
まっすぐな黒髪は目にかかるくらい長く、その隠されている瞳も黒い。左頬には傷がある。
「だ…誰?」
「月野荒夜。神楽高校1年」
神楽高校とは紅子も通う中高一貫校だ。どうやら同級生らしい。
しかし高等部は一学年300人もいるうえ紅子は公立中学からの編入生。更に男子とは殆ど話したことがないので、全然顔に見覚えがない。
「あ、私は紺野紅子ッていいます。ところでどうしてこんなとこに…?」
キョロキョロと辺りを見回す。どうやら学校の近くの公園のようだ。自分は今までそこのベンチに横になっていたらしい。
「ッたく…。覚えてねぇの?俺一応あんたに付き添ってたんだけど」
呆れたような荒夜の声を聞いて、紅子は今までの記憶を辿る。
―確か遅刻しそうだったから学校まで走ってて―
「曲がり角を曲がったら何かにぶつかったような……‥あ」
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