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「『何か』じゃなくて『誰か』だろ。何であんなに急いでたわけ?」
「だって遅刻しそうだったから…」
ボソボソと答える紅子を荒夜は訝しげに見やる。
「は?あの時は…まぁ余裕ではなかったけど遅刻するような時間じゃなかったじゃん」
「えッ?だって公園の時計見たらとてもじゃないけど間に合わなさそうで」
だから全力疾走だったんだよね、と紅子は説明した。
「ふーん。まぁ、あれだけ一生懸命に走ってれば時間確認もしなかったんだろうね。ところで…‥」
チラリと紅子の肩を見る荒夜。
「そろそろ制服返してもらえる?」
紅子は荒夜に言われて初めて自分の肩にかけられたブレザーに気づく。自分のものと明らかにサイズが違う。
「あッ…!ど、どうぞ;」
紅子は慌ててブレザーを返す。荒夜はそれを着ると
「それじゃあ俺は行くけど、まだ休んでたいならそうしてたら。かなり頭強く打ったし。一応冷やしといたけどさ」
確かに道路に強かに打ちつけたわりに、紅子の頭に痛みは少ない。
『何か怖い人かと思ったけど、意外といい人?』
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