4426人が本棚に入れています
本棚に追加
不意に飛来する白き刃が進路に突き刺さり、俺の逃亡を阻止する。
「――なぜ逃げる?」
涼風のような声が響き、人の影が木々の間から現れる。気配はなかった。幽鬼が水面を滑るようにして現れた人物に俺は驚く。
月光に照らされ煌めく銀髪、そこから覗く顔は雪のように白く、刃色の瞳と怪しい赤を含む唇が美貌を構成していた。
その瞳は俺を睨んでいて、美姫の唇はきつく締められている。
「変異種の子竜だ、お前も逃げろ!」
場に相応しく無い、美少女の登場に困惑する。しかし放っておくわけにもいかない。注意を促して逃亡を再開する。
空気が裂ける音とともに、再び閃く白刃が俺の退路を遮った。
少女の瞳には侮蔑と失望の色。
氷点下の視線に射抜かれた俺は戸惑ってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!