零章 刻まれる存在

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 不意に飛来する白き刃が進路に突き刺さり、俺の逃亡を阻止する。 「――なぜ逃げる?」  涼風のような声が響き、人の影が木々の間から現れる。気配はなかった。幽鬼が水面を滑るようにして現れた人物に俺は驚く。  月光に照らされ煌めく銀髪、そこから覗く顔は雪のように白く、刃色の瞳と怪しい赤を含む唇が美貌を構成していた。  その瞳は俺を睨んでいて、美姫の唇はきつく締められている。 「変異種の子竜だ、お前も逃げろ!」  場に相応しく無い、美少女の登場に困惑する。しかし放っておくわけにもいかない。注意を促して逃亡を再開する。  空気が裂ける音とともに、再び閃く白刃が俺の退路を遮った。  少女の瞳には侮蔑と失望の色。  氷点下の視線に射抜かれた俺は戸惑ってしまう。
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