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「『コード』を持つ貴様がなぜバグを恐れる?」
再度、少女の口が開く。しかし、それが意味をなすことはない。少なくとも俺にっては。
背後から迫る振動と咆哮。子竜だ。俺の額から冷や汗がどっと溢れ出す。
しかし見知らぬとはいえ、少女をひとりこんな状況に放置していいのだろうか。その数秒のためらいが致命的だった。
そう、化物の巨躯(きょく)はすでに目と鼻の先。いまさら逃げられる距離ではないのだ。
万事休す。絵に描いたような絶体絶命の状況に、俺はもはや言葉を紡げなかった。
俺が十数年分の思い出を美化しかけていると、異様なものが視界に入る。
銀髪の少女だ。白銀の剣を手にした彼女は悠然とした歩調で、子竜と対峙する。
勝てるわけがない。しかしその考えも数瞬後には、崩れ去る。
異常、理解不能な光景。少女の華奢な腕で振られた白刃は子竜を文字通り一刀両断。竜鱗の抵抗をも感じさせぬ一撃は、人が放てるものではない。
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