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少女の銀の瞳が次に捉えたのは俺だ。彼女の背後で子竜が血の花弁を咲かせ、命を散らす。
その血は鮮血色の光芒。ガラス塊が砕けるような大音響とともに、魔物は無数の欠片となって爆散した。
これが死。一瞬にして簡潔。一切の痕跡を残さぬ完全なる消滅だ。
そして予感が告げていた。次にこうなるのは俺自身だと。
彼女の細腕に握られた白刃が俺の鼓動を天井知らずに加速させる。
「『コード』を理解していない?」
少女は瞳に疑問符を浮かべる。だが油断は出来ない。俺は刃をしっかりと構えたまま相手を見据えた。
刹那、俺の身体に熱い衝撃が走る。口唇から深紅のほとばしりを吐く。遅れて、己の胸に刺さった剣を視界に捉えた。
白い刃は赤に濡れ、怪しく輝く。
「やはり貴様は――」
少女の声がノイズをかぶり、理解できない。遠退く意識と無くなっていく感覚だけが把握できた。
力の入らない手は刃を落とし、重い瞼は上がらない。思考が暗闇へと堕ちて往く、心の底までをも冷やす感覚から逃げるように――
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