三章 心の温度

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「む、この不快な貧民の波動。奏空が目を覚ましたか」  意識を取り戻して数秒、最初に考え始めたのが銀髪少女の形をした悪魔、シルヴィーの毒舌への対応とはどういう事態だろうか。  懐かしいと言うより、終わってる。つまんねぇと言うより、最悪な気分だ。 「シルヴィー、お前は思いやりという言葉の存在を知っているか? あれは実在するらしいぞ?」 「そう思っても言葉にしないのが、本当の思いやりだとは思わないか?」 「そんなこと言っちゃだめですよ、奏空さん。シルヴィーさん、付きっきりで看病してたんですから」  俺とシルヴィーの軽口のたたき合いに青髪の少女、サラが言葉を挟んできた。 「え――」 「サ、サラ! べ、別に私は奏空の心配など、断じてしていないッ!」  頬を桜色に染めて、シルヴィーが声を上げる。確かにその長い睫毛の下には、大きなくまが出来ていた。
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