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その生徒の名は三屋俊哉。あの事件で父親、母親、さらには兄までも失った悲劇の少年。作文には俊哉の悲痛な叫びが綴られていた。
「いつも一緒に居た家族が突然居なくなりました。行方不明になったわけではありません。父さん、母さん、それに兄貴。みんな悪い大人に殺されました。もう母さんの料理は食べられません。もう父さんとキャッチボールできません。もう兄貴とゲームを一緒に出来ません。今僕の願いがひとつだけ叶うなら≪家族を返して≫とお願いしたいです。・・・これで僕の作文は終わりです。」
発表を終え、席に戻っていく俊哉。生徒たちの拍手もまばらで、沖田の表情も曇っている。
「・・・み、三屋君、発表ありがとう。三屋君の家族への想いがよく伝わりました。さあ、三屋君に大きな拍手を。」
無理やり空気を盛り上げようと拍手をする沖田。そしてつられて拍手をし始める生徒たち。
「では次の生徒。えっと森君、お願いします」
授業を続ける沖田。しかしここでチャイムが鳴った。
「おっと、じゃあ今日はここまで。次回森君から再開します。」
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