『ごめん』じゃなくて。

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「だが、本当に風邪を引いているようなら医者に行ったほうがいい。行く余裕が無いのなら石田散薬を…」 「いやいや、風邪を引いたことを前提に考えんなって!」 懐をごそごそと探り出した斉藤を、慌てて平助が止める。 …―石田散薬とは斉藤が土方から譲り受け、万能薬だと思っている薬だ。 だが実は万能薬などではなく、川に生えている何とかという雑草を燃やしてすり潰しただけなのでそのような効能はない。 ちなみにその真実を知らないのは斉藤だけである。―… そんな事を話していると、心配そうに見ていた千鶴が「平助君。」と名前を呼びかけた。 そして振り向いた平助の前髪を「ちょっとごめんね」と言って上げ、その額にコツンと自分の額をあてた。 恐らく熱がないか測っているのだろうが、平助は突然千鶴の顔が目の前に迫ってきたことに驚き、赤面したまま目を見開いて、固まってしまったように静止した。 皆も千鶴の行動に驚き、一時シンとなったが平助の熱を測ることに精一杯な千鶴が気づくはずもない。 、
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