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「なんで人を殺したらいけないのかな?」
いつもの登校ルート。いつも横にいる彼女。いつもの朝。そしていつもの唐突な質問。
この問いに、僕が答えられるなんて彼女は思ってもいないだろう。
それまで彼女とは逆方向にある涼しげに流れる川を見ていたが、視線を外して顔だけ横に向ける。
淡い栗色の髪を腰の近くまで伸ばしているが、いつもコロコロと変わる髪型はポニーテールになっていた。
猫のように大きな瞳に、桜の花弁のように薄いピンク色の唇。あまり活発的に動く方ではないので、肌の色は白い。
それが僕の幼なじみである、相崎楓(アイザキカエデ)今年で18歳の高校生である。
「うーん、そうだなぁ。やっぱり人が人を殺すのは、同族同士であまり気分の良いものじゃないからね」
こんな質問に答えなど持ち合わせていない。だから、なるべく当たり障りのない程度で返す。
しかし彼女は、頬をハムスターのように膨らませると、
「ちゃんと考えてよぉ。私はこれで悩んでいるんだよ?だって、虫とかなら、みんな平気で踏んじゃうよね?だったら、なんで人間は駄目なの?」
桜吹雪の中、なんで僕達はこんな物騒な話をしてるんだろうか。周りから白い目で見られている気がするが、それは勘違いではないだろう。
「ねぇ、聞いてるの、恭史(タカフミ)!」
「ああ、聞いてるよ。……どうせ、昨日の刑事ドラマに感化されたんだろ?あれ、熱血刑事が、最後には命の大切さを語るからね」
「あっ、バレた?あはははは。凄いね~」
ポニーテールの髪型を揺らしながら、彼女は人の目など気にせずに笑った。
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