第1話 君との登校

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校門を潜り抜け、僕達は学校へと足を踏み入れた。 朝練をしているサッカー部員の横を通り抜け、前方に見える生徒玄関を目指す。 「みんなは、朝から元気だよね。眠いのは私だけかな?」 目を擦りながら楓は汗を流している生徒を見つめていた。 「いや、楓だけじゃないよ。僕だって眠いさ。でも、ああやって体を動かしていると、脳のスイッチでも切り替わるんじゃないかな。……でも、授業中に寝てる人もいるけどね」   そんな他愛のない話をしていると、玄関にたどり着いた。 左端の方に三年生の下駄箱があるので、そこまで歩き、外靴を脱いで中靴と履き替えるために鉄製の靴箱を開ける。 と、その時。ドサドサッと音がした。もちろん、僕の箱からではない。 女子用の靴箱。僕から見て右にあるのだが、そこからしたのだ。 「うーん。まただぁ……」 楓のうんざりした声が聞こえてくる。これは最早、朝の風景にさえなりつつある光景だ。 毎朝毎朝、彼女の靴箱には部活の勧誘チラシやら今ではちょっと古いラブレターなどが敷き詰められている。 その全部を楓は断っているのだが、よくもまぁ、諦めずに続けるよね。僕だったら、一回目で止めるのに。  というか、もう三年生で、後三ヶ月もしたら引退なのに勧誘している部活は楓をどうしたいのだ。
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