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「ちくしょー!」
今日もあの餓鬼に負けた。
幼馴染みの島崎勝太が養子に入ったあの道場で、俺より九つも年若の餓鬼。宗次郎に。
「ちくしょぉー!!」
道場から少し離れた竹林で、俺は毎日一人で稽古をしていた。
まぁ稽古って言っても復習みてぇなもんだが……。
宗次郎の野郎。勝っちゃんに気に入られてるからって調子こきやがって!
「どりゃぁ!!」
持っていた荷物を下ろすと、俺は竹刀を手にヒラヒラ舞う笹の葉を次々と払い落とした。
どの位そうしていただろう。空が夕焼け色に染まる頃、一人の餓鬼に気が付いた。
そいつも剣術の稽古なのだろう。竹刀を振っているが……。
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