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「ちげぇな。なってねぇ」
ガチンと竹刀の当たる音が鳴る度に俺は言う。
餓鬼の相手は嫌いだ。だがこの餓鬼は……。
俺に頭を下げたこの餓鬼は、まだ十一(歳)だと言う。しかも女。
「女の分際で何故剣術を?」
そう訊ねたのは三日前。餓鬼が頭を下げた日だ。
「……助けたいから」
下を向いたまま餓鬼が言った。
だから初めは何て言ったのか分からなかった。
「力になりたいんです。みんなの」
拳を握りしめ、泣きそうな声で言う。
だが顔を上げたその目は乾いていた。
そして真っ直ぐ俺を見据えて来た。あの大きな瞳で。
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