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眩しい朝日を身体中に浴びながら、彩は見慣れた道をただひたすらに歩いていた。
頭上に果てなく広がる青色の空は、まるで色のついたビー玉を連想させる。
ビー玉が景色を歪めて映し出すように、この晴れやかな空も彩の気持ちを歪めて反映していた。
つまり、今の彩の気分は最悪なのである。
リップが塗られた瑞々しい唇は半開き、薄く開いた奥二重の瞼の間から覗く大きな瞳は果てしなく虚ろ。
よく誉められる長い睫毛もストレートパーマをかけたセミロングの黒髪も、まだ幼さを残した可愛らしい顔立ちも、全部が全部輝きを無くしている。
しかし本人はそんな事を気にする機会も余裕もない。
時々リバースしかかる消化途中の朝食を気力で押し戻し、彩は高校へ向かうため朝日に照らされた住宅街をひたすら闊歩するのみだった。
そのうち、ただ歩くだけという作業に飽きたのか不意に彼女はポケットを探って携帯電話を取り出した。
クマのキーホルダーがついただけのシンプルな白い携帯電話を片手で器用に開き、彩は歩みを止める事もなく画面に目を落とす。
そこには新着メールを知らせるアイコンと共に、受信したメールの件数が表示されていた。
『新着メール:15件』
普段なら迷惑メールかと眉をひそめそうになる件数だ。
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