10973人が本棚に入れています
本棚に追加
/314ページ
チャンスは立ち上がる一瞬のみ。
緊張で汗がとまらない。
それでなくても僕は汗っかきなんだ。
手の平の汗で砂がくっついちゃう前に、武将たちに投げつけてやる!!
「いつまで座ってんだコラ!!」
たぶん政宗が言った。
……今しかない!!
「くらえ、目潰し!!」
立ち上がると同時に、武将軍団目掛けて力いっぱい砂を投げた。
「うわ!?なんだコイツ!!」
「いてぇ。目に入りやがった!!」
武将が僕たちから顔を逸らした。
「真里ちゃん!!早く逃げて!!」
僕の声を合図に、真里ちゃんは地面を蹴った。
砂埃が舞う。
「太郎くんも、早く!!」
真里ちゃんが言った。
今にも泣き出しそうな顔で、僕を振り返る。
「すぐに行くから。だから先に行ってて」
「でも……」
「早く!!」
織田信長がこちらの動きに気づき、真里ちゃんを追うために飛び出した。
「行かせない!!」
僕は彼の足首をがっちり掴み、転ばせることに成功した。
「ありがとう、太郎くん」
真里ちゃんが走っていく。
彼女が確実に公園を抜けるまで、目を離さなかった。
僕は彼女を守ったんだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!