ふたつめの飴

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こんな風に持ち歩いてもらえて、トイレットペーパーも幸せだろうな。 うん。 きっと幸せだ。 僕はてっちんから受け取った薔薇の香りつきのトイレットペーパーで、顔を拭いた。 血と唾液が混ざり合った液体がペーパーにこびりつく。 自分が思っていた以上に出血していたようで、思わず倒れそうになった。 いや。 実際にはまだ倒れたままなんだけど。 僕とてっちんのやり取りを見ていたマーボーとひろりんもやってきて、起き上がる手助けをしてくれた。 本当に優しい人たちだ。 嬉しさと安堵感から涙が溢れてきた。 彼らがいなければ、僕は今頃死んでいたかもしれない。 翌日公園で男子高生の遺体が見つかった、と報道されていたかもしれないんだ。 そう思うと今頃になって泣けてきた。 「助けてくれて、ありっありっ……ありがとう」 涙が止まらない。 こんな情けない姿、真里ちゃんに見られなくて良かった。 .
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