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「そんなとこ突っ立ってないで座りなさいよ」
おばあちゃんに促され、僕はちゃぶ台を挟んで座った。
熔けだしたアイスを慌てて口に入れると、頭がキーンと痛み、こめかみを押さえた。
「これでも飲みなさい」
おばあちゃんが出してくれたお茶は、緑が深くてとても濃い、優しい香りのする緑茶で。
「いただきます」
一口飲んでみる。
……ぬるい。
なんだこの生温さは。
「お、美味しいよ」
顔が引き攣った。
嘘は言いたくなかったけれど、正直いって美味しくなかった。
おばあちゃんは満足そうに笑って、僕の湯呑みにお茶を足そうとする。
「もう、大丈夫だよ」
さりげなく手で蓋をする。
これ以上飲めない……いや、飲みたくない。
それにしても、おばあちゃんとこうして優雅にお茶を飲むなんて何年ぶりだろう。
僕がひとり過去を思い返していると、おばあちゃんが
「太郎は押しが弱いタイプだねえ」
と言った。
「押し?」
よくわからなかった。
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