みっつめの飴

16/54

10973人が本棚に入れています
本棚に追加
/314ページ
「そんなとこ突っ立ってないで座りなさいよ」 おばあちゃんに促され、僕はちゃぶ台を挟んで座った。 熔けだしたアイスを慌てて口に入れると、頭がキーンと痛み、こめかみを押さえた。 「これでも飲みなさい」 おばあちゃんが出してくれたお茶は、緑が深くてとても濃い、優しい香りのする緑茶で。 「いただきます」 一口飲んでみる。 ……ぬるい。 なんだこの生温さは。 「お、美味しいよ」 顔が引き攣った。 嘘は言いたくなかったけれど、正直いって美味しくなかった。 おばあちゃんは満足そうに笑って、僕の湯呑みにお茶を足そうとする。 「もう、大丈夫だよ」 さりげなく手で蓋をする。 これ以上飲めない……いや、飲みたくない。 それにしても、おばあちゃんとこうして優雅にお茶を飲むなんて何年ぶりだろう。 僕がひとり過去を思い返していると、おばあちゃんが 「太郎は押しが弱いタイプだねえ」 と言った。 「押し?」 よくわからなかった。 .
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10973人が本棚に入れています
本棚に追加