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突然、てっちんが僕の肩に腕をまわしてきた。
「真里のこと好きなんだろ?がんばれよ」
と、そっと耳打ちする。
顔から火が出そうになった。
だだだって、てっちんが急に変なこと言うから。
ここはタクシーの中で、僕とてっちんと運転手さんしかいないのにわざわざ耳打ちをするところが、マーボー的にてっちんの可愛いところなんだと思う。
うん。
何となく掴めてきたぞ。
「俺、太郎ちゃん好きだし、マジで応援してやるよ」
長い髪をかきあげ、てっちんは優しく笑う。
「てっちん……」
僕は泣きそうになった。
真里ちゃんのお兄さん……いや、お兄様は、ただのヤンキーじゃございません。
「ぼぼ……僕もてっちんのこと、好きだよ」
「……お前にそう言われるとゾッとする」
ピシャリと言い放ち、てっちんは再び前を向いた。
今までの甘いやり取りは何だったんだ。
僕は少しずつ吊り上がるメーターを見つめながら、やっぱりヤンキーの気持ちは一生わからないな、と思った。
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