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真里ちゃんはすぐに見つかった。
昨日僕と並んで座ったベンチにひとり静かに腰掛けている。
「真里ちゃん」
思わず声をかけた。
真里ちゃんの笑顔が見たいのに、彼女は目の縁を真っ赤に腫らした顔で僕を見上げ弱々しく笑った。
「ここにいれば太郎くんに会えるかなって思ったの」
胸がギュンと掴まれた気がした。
なんて可愛い台詞なんだ。
僕は嬉し過ぎて一瞬言葉をなくしてしまった。
「ぼっぼく……」
「おう!真里、元気か!?」
被せるようにして、てっちんの声がした。
……そんなぁぁぁ。
“僕も真里ちゃんに会いたかった”。そう、彼女に伝えたかったのに。
僕の勇気はあっけなく散った。
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