みっつめの飴

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「きゃっ」 真里ちゃんが小さく悲鳴をあげた。 それはもちろん、僕が急に彼女を抱きしめたからで。 「ごごご、ごめんね!!」 僕は慌てて彼女から離れた。 真里ちゃんは蒼白した顔で後ずさる。 ……何てことをしてしまったんだ!! 僕のアホ。これじゃ変態だ!!ただの変質者だ!! 抱きしめていいわけないだろ。 相手に了解を得ずに触れたら痴漢と一緒だ。 好きでもない男に触れられて、真里ちゃんはきっと嫌な思いをしたはず。 「真里ちゃん、ほんとにごめんね。慰めたくてあんなことしちゃったんだ」 言い訳がましいけど、許して欲しくて必死だった。 「ううん。違うの」 真里ちゃんは怯えたように僕の肩を指さす。 「……蜘蛛が、そこに蜘蛛がついてるの」 ……蜘蛛? 僕は自分の左肩を見た。 そこには親指の爪くらいの蜘蛛がのんびり休憩していて、指先で触れるとカサカサと早足でいなくなった。 「あたし蜘蛛が苦手で……」 「……なんだ」 力が抜けた。 触られたことが嫌だったんじゃないんだ。 安心して座り込みそうになった僕に、 「あ、でも泣いてたからって急に抱きしめるのはナシね」 と、真里ちゃんが爽やかに言った。 .
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