僕が僕だった日

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こんな時に忘れ物をするなんて、岩ちゃんの言う通り僕の脳みそは少ないのかもしれない。 重い体を揺らしながら、急いで部屋に戻った。 勢いよくドアを開くと、ベッドに寝転がるおばあちゃんと目が合った。 片手に、食べかけのせんべいが握られている。 「ちょっとおばあちゃん!!ベッドの上で食べないでよ」 洗ったばかりのベッドカバーに、大小様々なせんべいのカスが散らばっている。 「寝る時踏んだら痛いんだから、しっかり片付けてよね!!」 僕がキッと睨むと、おばあちゃんはわざとらしく溜息をつき、せんべいのカスを床に落とした。 「はい。これでベッドは綺麗ですよ」と、ふざけたことを言う。 ……いい加減にして、と言おうとしたけれど、僕は何とか言葉を飲み込んだ。 おばあちゃんはこういう人なんだと、諦めるしかないのだ。 反論しても無駄だとわかっていて、いちいち言い返す気になれない。 知らぬ間にどんどん大人になっていく僕。 すごく立派だ。 .
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