僕が僕だった日

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猛スピード……とは言えないようなまあまあ速い速度で自転車は進む。 まあ、僕が重いからね。 岩ちゃんは力強くペダルを漕ぎ続ける。 僕は頑張る岩ちゃんの背中に訊いた。 「真里ちゃんの家わかってるの?」 岩ちゃんのことだから、適当に走っていれば着くかな、なんて浅はかなことを考えていそうだ。 岩ちゃんは待ってましたとばかりにニヤリと笑いながら、振り返った。 だけど、僕の質問には答えない。 無視……ですか? 「ねえ、岩ちゃん」 「うるせーな。家はわかってるって言っただろ?」 ……いえ。 何も聞こえませんでした。 「それならいいんだけど」 何もそんな言い方しなくてもいいのに。 僕は汗くさい背中に顔をつけながら、ちょっぴりいじけた。 .
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