僕が僕だった日

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「太郎くん、泣かないで」 真里ちゃんが僕にハンカチを差し出した。 薄いピンク色にうっすら花びらの刺繍がしてある、可愛いハンカチ。 「ありがぼう」 僕は涙でぐしゃぐしゃの顔をハンカチに押し付けた。 ……いい香り。 真里ちゃんが貸してくれたハンカチは、彼女と同じでとてもいい香りがした。 そういえばてっちんからも同じ香りがしたな、なんて、ふと思った。 僕が涙を拭き終わると、真里ちゃんは僕を真正面から見つめ、 「改めまして。はじめまして、太郎くん」 と笑顔を向けた。 「真里ちゃん……」 僕は嬉しくて言葉につまる。 「ほら、何か言えよ」 岩ちゃんが僕の脇腹を肘でグリグリ突く。 「……こんな、こんな僕ですが、ととと……ともだつになってください!!」 「ともだつって何だよ!?」 岩ちゃんが吹き出した。 同時に真里ちゃんも笑い、犬の太郎くんがバウっと鳴く。 「こちらこそぜひ仲良くしてください」 真里ちゃんが少しだけ頬を赤く染め、僕に笑いかけた。 .
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