僕が僕だった日

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岩ちゃんは舌のうえで飴を転がし、ゆっくり味わうように舐めている。 ……嘘でしょ。 あんなに臭い飴を味わうなんて。 しまいには 「なかなかウマイな」 なんて言い出した。 狂ってるよ、岩ちゃん。 ウマイと言いながら吐き出した息があまりにも臭すぎて、僕と真里ちゃんは後ずさった。 まるでヘドロまみれのドブに居るような不快感だ。 ……て、待てよ。 あと3分したら岩ちゃんは変身しちゃう。 僕たちはここにいちゃいけないんだ。 「岩ちゃん隠れて!!変身する姿を人に見られちゃいけないんだ!!」 「は?そんな決まりあんの?」 岩ちゃんは臭い息を撒き散らしながら、のんきに鼻をほじっている。 「そんなことしてる場合じゃないよ!!大変なことになるって!!」 「大変なこと?何だそれ」 「何って言われても……」 僕だって知らないんだ。 ただおばあちゃんにそう言われただけだから。 .
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