僕が僕だった日

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3分はあっという間だった。 瞬く間に岩ちゃんの体からしゅわしゅわとした煙がたちこめる。 「どうなってんだ!?体が熱いぞ!!」 岩ちゃんの体をもくもくとした煙が包み込み、姿を隠す。 「岩ちゃん?」 なかなか煙から出てこない岩ちゃんを心配して、僕は煙を掻き分けた。 「なんだよこの煙。目に染みるんだけど!!」 ようやく消えはじめた煙の中から現れた岩ちゃんの顔を見た瞬間、 僕は「ひゃっ」と悲鳴をあげてしまった。 だだだって。 岩ちゃんの顔が。顔が。 「あ?どうしたんだよ太郎」 岩ちゃんはつるんとした黒い肌を僕に向けたまま、首を傾げる。 「岩ちゃん、見えてるの?大丈夫なの?」 「見えてるも何も、どうしたんだっつってんだろ?」 ……言ってもいいのかな? いや、むしろ言わなきゃダメだろう。 「岩ちゃん、顔、なくなってるよ」 「へ」 岩ちゃんが両手でぺたぺたと自分の顔を確認する。 「ここが目だろ?で、ここが鼻。嘘つくんじゃねえよ!!ちゃんとあるじゃねーか!!」 岩ちゃんが怒鳴る。 いつもなら間違いなく唾が飛んでくるはずなんだけど、今日はそれがない。 だって、口がないから。 .
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