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日焼けした黒い物体がひとりで騒いでいる。
目も鼻も口もない。
ただつるんとした黒い肌に、かつらのように髪の毛が乗っている。
「……のっぺらぼうっていうんだよね」
真里ちゃんがぼそりと呟いた。
そうだ。
たしかのっぺらぼうという妖怪がいた。
今の岩ちゃんは、まさにソレだ。
「え?俺のっぺらぼうなの!?」
誰よりも慌てているのは岩ちゃん本人で、
僕は「ああ、これが大変なことか」とひとり納得していた。
真里ちゃんに至っては「太郎くんのアドバイスを無視したのは自分でしょ?」と、平然と言い放つ。
……まあ、そうだけど……ねえ。
真里ちゃんは岩ちゃんには冷たいらしい。
「俺どうなっちゃうの!?」
頭を抱えて大騒ぎする岩ちゃん。
いつになく弱気な岩ちゃんを見れて、僕はとても愉快な気持ちになった。
この先こんな姿、二度と見られないかもしれない。
太陽にも見せてあげたかったな、と本気で思ってしまった。
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