僕が僕だった日

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僕は岩ちゃんという人間に慣れるまで数年かかったというのに。 「どう!?似合う!?」 サングラスとマスクを装着した黒い人間が、僕に話しかけてきた。 「いいんじゃない?」 のっぺらぼう隠しには最適アイテムだ。 制服姿にサングラスとマスクは、間違いなく怪しいけれど。 「それじゃ真里ちゃん、また明日ね」 僕は彼女に手を振り、岩ちゃんとふたり乗りしてきた自転車を押して歩き出した。 すると、彼女が「ちょっと待って」と僕を呼び止めた。 小走りで近づいてくる真里ちゃん。 そして言った。 「その自転車、あたしの家のだと思う……」 と、申し訳なさそうに言った。 ……え。 僕はポカンとした。 まさか岩ちゃんが、真里ちゃんの家から自転車をパクってきたなんて……。 .
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