僕が僕だった日

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いや。 岩ちゃんだって、さすがに真里ちゃんの家から自転車を盗むことなんてないよ。 「岩ちゃん。……間違いだよね?」 僕はサングラスとマスクをしたのっぺらぼうに訊いた。 「あーあ、バレちまったかー!!」 岩ちゃんはガハハ、と笑った。 見えないからわからないけれど、もし見えていたら間違いなく大口を開けているだろう。 ……どうして笑えるんだよ。 悪いことをした自覚がまったくないようだ。 さすがに腹がたった。 岩ちゃんが狂っていることはよくわかっているつもりだ。 でも、やっていいことと悪いことがある。 「岩ちゃん!!真里ちゃんに謝って!!岩ちゃんのやったことは犯罪なんだよ!!」 「いちいちうるせーな。俺がここから自転車をパクんなかったら、お前を迎えに行けなかったんだぞ!?わかってんのか!?」 逆ギレした岩ちゃんが僕の胸ぐらを掴んだ。 「それとこれは話が違うでしょ!!」 いつもの僕ならきっと「そうだね、ごめんね」と折れていた。 だけど 僕は変わったんだ。 .
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